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[モードの極意]52:着心地つれづれ。
No.52:着心地つれづれ。
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着心地(きごこち)についておもいをめぐらすと、
今でも忘れられない出来事があります。
それは、女性の服。
あるワンピースについての意見。
「腕が上がらない」というものです。
昔々に勤めていた、レディスウェアの営業をしていたときのこと。
そのブランドは国産プレタポルテという位置付けで、
どちらかと言えば、お出かけ用の服を製造しているメーカーでした。
あるとき、店頭の販売員さんから、
「このワンピースは売れませんよ。だって、腕が上がらないんですから。」
という意見をもらったのです。
確かに、試着してみてもらうと、
腕を上げていくと肘が九十度まで行く前につっぱり感が出てしまい、
手が上がらないのです。
「これじゃあ電車なんかに乗っても、つり革につかまれないでしょ?
売りにくくてしょうがありません。」
まあ、現品を一緒に確認した自分としても、
反論の余地はないようにおもいました。
その話を企画部に持っていくと、
責任者であるマーチャンダイザー(略称エムディー:MDとも言う)
がひとこと。
「それは電車でつり革につかまるような服じゃないよ。」
果たしてそのワンピースは夏物の軽装とはいえ、
フラワープリントの半袖:パフスリーブタイプで、
ややドレッシーなものでした。
そして袖部分をより正確に言えば、
切り替えはしないで、ダーツやギャザーだけで
ランタンスリーブ(ちょうちん袖)の形を作ったものです。
「手を上げるような服じゃない。」
それは古き良き時代の企画部門の言いたい放題なのでしょうか。
後に企画部や生産部の仕事を経験してみると、
そう言い切ってしまう服作りがあってもいいようにおもえます。
結局は、どちらの側にも一理あるような気がしてしまうのです。
そうおもうとポイントは、どのように販売するかについて。
いわゆる戦略として周到に用意すべきことがあったのではないか。
今なら、そんな風に考えるのです。
服を買う立場としてみれば、
どういうシーンでどのように着て欲しいという主張がある服ならば。
それに乗るのか、はずすのか。
自分はこれをどう着るのか、着たいのか。
そんなことを考えながら服を選ぶのも、
楽しいのではないでしょうか。
着心地は、服そのものにだけ存在しているわけではないんだな
とおもうのです。
┌───────────────────────────────┘
(No.52:着心地つれづれ。~終)
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