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『コスメの時代』
コスメの時代
「私遊び」の現代文化論
出版:勁草書房
著者:米澤 泉
定価:2,100円+税
メイクで自己プロデュースする女性たち。
私らしさや個性を追い求める時代から、ゲームのように
キャラになりきり「私」を遊ぶ時代へ。
(帯より)
ファンからフリークへ。「オタク化」というのは現代の特徴なのでしょう。
目次
はしがき
序章 ファッションの80年代から化粧の現代へ
1 ファッションから化粧へ
2 プリクラ、ケータイ、インターネット
3 サブカルチャーとしての化粧
第1章 少女の消滅―オリーブ少女からコギャルへ
1 「メークの天才」を目指す小学生
2 オリーブ少女という文化
3 コギャルと化粧
4 ロマンティックから「今、ここ」へ
第2章 物語の終焉―教養小説からキャラクター小説へ
1 2007年創刊『AneCan』を読む
2 80年代『an・an』を読む
3 90年代『JJ』を読む
4 教養小説からキャラクター小説へ
第3章 個性神話の崩壊―コム・デ・ギャルソンからユニクロへ
1 デザイナーは読者モデル
2 コム・デ・ギャルソンという神話
3 ユニーク・クローズ?
4 個性服から制服へ
第4章 フラット化する「私」―「毒(プワゾン)」から「ヤングセクシーラブリー」へ
1 「ヤングセクシーラブリー」な現在
2 80年代の「毒(プワゾン)」
3 幻の水を求めて
4 フラット化する「私」
第5章 1億総オタク化社会―モノ語りの人々からコスメフリークへ
1 化粧に捧げる24時間
2 着ることは生きること
3 ファッション・センスから「ビューテリジェンス」へ
4 化粧に萌える女たち
終章 私探しから「私遊び」へ
1 自己表現から「萌え」へ
2 「私遊び」としてのコスメ
3 私探しから「私遊び」へ
あとがき
参考文献
索引
服装の成熟と次の一手
人間の物理的な仕様は数千年の単位では大きく変化していません。
頭が一つあり、手足が二本あり、、、ということです。
そうなのですから、身にまとう服装にもその限定がおのずと生じているでしょう。
戦後、追いつけ追い越せの精神で海外の物事を学び、さまざまな分野において器用さを発揮してきた日本。
そういう国において、洋装が完全に定着したと言えるのが1980年代なのではないでしょうか。
そしてそこには、一通りやりつくした感じ=飽和意識も同時に生まれたような気がします。
おおかたの学びの時が過ぎた洋装について、現代は放課後、または自由な研究の時間。
興味のある人はさらに勉強や演習を続けていますが、興味のない人・失っている人は手放してしまったか、服(装)ではない新たな教材を手にしているのです。
そんななかで、広義のファッション=装いに興味があり続ける人たちの一部には、「化粧」に取り組む人々があらわれました。
服装と比すれば、「化粧」はまだ飽和しておらず、まだ勉強の余地が残されていたのです。
そして、装うこと自体に関してはもう服(装)でさんざんやってきたわけですから、応用問題:演習的な形態へと進んでいくのが早い。
それは、森を見るよりも木を見る、総論よりも各論で勝負するオタク的なアプローチとしての広がりにつながっていきます。
時代の空気も同時に変わっています。
世の中全体が、重厚長大から軽薄短小へ。
ファッション=装いについては、自己主張から自己演出へ。
加えて、どうするかという意思よりも、どう見られているかという事実が重視されているのです。
その結果、唯一の私を作ることよりも、さまざまな私(の外装)を借りてきて着せ替えるという、筆者の言うところの「私遊び」へと向かう人々が生まれているのではないでしょうか。
現代が現代を語ること:自己言及の難しさ
筆者はさまざまな資料にあたり、できるだけ出典を明記しながら論を進めています。
なかなか多岐にわたってまとめられていますが、それが逆に論考というよりも分析的な雰囲気になっているような感じも受けます。
その点ではパーツを集めて形作ったような印象を生んでいるようで、少し残念な気がします。
(一例として、80年代を語るのに当時有名な雑誌「アクロス」からの引き写しでは、こぼれ落ちているものがあまりにも多いのではないでしょうか。)
しかし、もっとも。
自分の生きている時代を論証するのは、かなり難しいことなのだと考えるほうが自然でしょう。
これからどうなっていくのかを考えるとき、その参考書になりそうです。
『コスメの時代』(2009.04.30)
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