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[モードの極意]8:見る/見られる。
No.8:見る/見られる。
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モード/ファッションとは何か。
ふいにそう聞かれると、
「ファッションとは自己表現である。」
などと、どこかで耳にしたことがありそうなフレーズを
口にしてしまいそうです。
それ自体に異を唱えたい人はあまりいないとおもいますが、
かといって、全面的に支持できるというわけでもなさそうな。
単にそれだけではない面も、ありそうです。
実際に、文化出版局や高島屋、資生堂などを経て、
現在NPOユニバーサル・ファッション協会名誉会長を
務めていらっしゃる今井啓子氏は、
「ファッションのチカラ」(ちくまプリマー新書)のなかで
『そもそもファッションというものは、
自分を見つめるための一つのツールなのです。
ファッションの命は着る人の自己表現として、
その個性化と多様化にあります。』
と記しています。
それはファッションを考えてみるときの、
至極もっともな感覚の一つでしょう。
しかし、いつ、何を着ていても、自己表現なのでしょうか?
自分の家でくつろいでいるとき、
ちょっとコンビニまで買い物に行くとき、
電車やバスなど交通機関を使って目的を持って出かけるとき、
学校や仕事場に行くとき。
それらのすべてが自己表現だとすると、
それはそれで息苦しさがありはしないでしょうか。
ほかに考えたり楽しんだりしたいことがたくさんあるし、
どちらかと言えば何を着ていてもいいや、
という人もいらっしゃるでしょう。
そういうときには、
わたしは匿名な存在でかまわないという、
いわば見る/見られるという関係性を降りています。
とはいえ、身につけるものを減らせばいいということでもない。
それは返って、その人を雄弁に語らせることができます。
Less is more.(レス イズ モア:より少なくは、より豊か。)※
衣服を身に着けないでいることはできませんが、
いつも見られていたいわけでもありません。
着ることの最低限と、自己表現のあいだ。
大阪大学総長、哲学者でもある鷲田清一氏は
「悲鳴をあげる身体」(PHP新書)のなかで、
おしゃれとは自己表現ではなく、
身体固有の想像力とコモンセンス(良識)による他者への振る舞い、
気遣いであるというようなことを書いておられます。
言い換えれば、それは歓待。
もてなしとでも言えるものなのではないでしょうか。
ファッションとは見る/みられるという視線の戯(たわむ)れです。
飾らないとき、気張るとき、両極端なら結構できちゃうもの。
「身支度(みじたく)」から「身だしなみ」、
そして、もてなしとしての「おしゃれ」。
さらに「自己表現」にまで至るグラデーション。
ある一日のひとつのコーディネイトのなかにも、
そんな切り口を当てはめてみると、
センスに幅や奥行きが感じられるようになるのではないでしょうか。
┌───────────────────────────────┘
(No.8:見る/見られる。~終)
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