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『ブランドの条件』
ブランドの条件
出版:岩波新書
定価:700円+税
愛知淑徳大学教授によるブランド(分析)論。
ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルを主に取り上げて論じ、それらを通してブランドのブランドたる条件、理由を考察しています。
ブランドの条件:その本質とは?
ルイ・ヴィトンとエルメスをその原点からたどってみること。それによって考えられるブランドの条件とは、、、
1.皇室御用達
2.伝説化した起源を持つ歴史と伝統
3.貴族財という贅沢(ラグジュアリー)品
4.ハンド・メイドという希少性と信頼性
考えてみると、これらは旧来から「ブランド」と呼ばれている製品が必ず備えてきたものでしょう。
しかし今日を生きる私たちからすれば、それらは『19世紀的な概念に裏付けられた、やや古いスタイルである』ということも、認めることができそうです。
翻って20世紀以降を見てみましょう。
いつの時代でも、女性の衣服はその生き方とともにあります。
召使いに着せてもらうものであった、皇室や貴族のラグジュアリー(贅沢)なドレスと装身具の数々。そのような女性のあり方が変化していきます。世の中は貴族主義から民主主義へ。
ほんの一部の人たちのものであった品々が、大量生産大量消費の時代へと向かうことで、普通の人々の手にも届けられるようになります。そうです、オートクチュールからプレタポルテへ。
では、数々のブランドもそれらの威光を失うばかりなのでしょうか?
シャネルはグーグルさながら!
旧来の常識を捨てて、新しい風を吹かせたのが新たなブランドの創設者:ガブリエル・シャネル。破壊から創造へという主題が共通する要素でしょうか。
彼女のすごいところ。たとえばそれらは、
1.大量生産の受容
2.過去の価値観の更新(転倒)
3.コピーの容認
個々人へのオーダーメイドだけが価値ではない。限られた人に高く売るのではなく、たくさんの人に安く買ってもらうということ。
主体的に活動する新しい女性像の提示。それに見合う服は過去の特長の逆をゆきます。
それまで、コルセットに覆われることが当たり前であった女性のカラダ。それを解放したのは、ポール・ポワレといわれていますが、解放をさらに押し進め、一般に広めるまでに至ったのはシャネルの功績なのでしょう。
体を拘束しない着やすいジャージー素材を、堅苦しくなく動きやすいラインに仕立て、スカート丈は歩きやすい短さにしてしまう。果ては、当時としては大胆にも、男物から発想したパンツ・スタイルまで提案する。
主人は召使いがいるから主人でいられる。本物は偽物によってこそ輝くという、いさぎよくも新しい考え方。地位や身分のための宝石なんていらない。
アメリカという新しい市場(マーケット)を得て、シャネルは輝きを増していきます。
ノンを言い続けても、常に先頭を行けば追い越されることはありません。火のないところに煙を立てさせた女性が、シャネルその人なのでしょう。
貴族のいない国
ブランドが大衆に好まれるアメリカや日本。
マス(大衆)向け消費の成功者という側面から付け加えておけば、雑誌などのマス・メディアにブランド=自分自身を実況中継してもらえることにも注視していたシャネル。
こうして見てくると、資本主義の勝者たるための理屈、そのさまざまな操作自体がそのままブランドの条件なのか、という気もしてきます。
とはいえ、どちらが原因で、どちらが結果なのか。
モードやファッションと親和性の高い「ブランド」という概念。
その歩みは過去から未来へと螺旋を描きながら進みゆくという点では、人の生きざま、人生そのものなのかも知れません。
ブランドの条件(岩波新書)
目次
はじめに ‐ なぜこのバッグが欲しい?
1章 ブランドの誕生 ‐ ルイ・ヴィトンはいかにしてルイ・ヴィトンになったのか
2章 希少性の神話 ‐ エルメスの戦略
3章 貴族のいない国のブランド ‐ シャネルとマス・マーケット
4章 ブランドは女のものか ‐ 贅沢文明史にむけて
終章 「変わること」と「変わらないこと」
引用・参考文献一覧
あとがき

『ブランドの条件』(2006.09.22)
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